この本は面白い!『歴史小説の罠』

『歴史小説の罠』(福井雄三/総和社)

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「司馬史観」として知られる司馬遼太郎の歴史観を、いくつかの代表作を分析しながら論理明快に批判している一冊。

司馬遼太郎の小説を読むかの如く、グイグイと引き込まれました(笑)

著者は、司馬氏が類い稀な才能を持つ傑出した作家であることを十分認めた上で、その歴史観に潜む危険性を指摘していきます。

その危険とは司馬史観に潜む単純明快さにあるといいます。

明治の栄光・昭和の破滅、海軍善玉・陸軍悪玉といったように、<いとも単純に一刀両断する善悪二元論の思考方法、認識の仕方>(179頁)がその特徴だと。

これは登場人物の描写にも当てはまることで、片や無能で盲目的な指導者がいるかと思えば、理知的で賢い人間も対置される。

たしかに善悪二元論で語ったほうがわかりやすいし、ヒーローに喝采を送りやすい。

しかしちょっと冷静に考えれば自明なことですが、歴史がそんなに単純にすっぱりと語れるはずがありません。

誰かが絶対的に悪かったり、ある日を境に国が突然暴走していくなど、たしかに現実的な見方ではないでしょう。

ボクはこの本ではじめて、『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』のいずれもが新聞連載小説だったことを知りました。

新聞小説であるからには、とにかく読者を惹きつけ、熱狂させる必要があります。

この点において、司馬氏は優れた講談師のような才能を有すると著者は繰り返し述べています。

問題は、「小説」としてはそれで十分面白いのだけど、それをあたかも「史実」であるかのように読者が受けとめてしまうこと。

特に司馬氏のように、現代に直結する明治から昭和という時代が主たるテーマとなっている場合、その誤った「史観」が及ぼす影響力は放ってはおけない、というのが著者の主張。

本書では、司馬史観を受け継いでいる代表的作家として半藤一利と村上春樹も取り上げています。

「歴史は小説で学ぶな」とよく言われますが、本書を読んでさらにその思いを強くした次第です。

【今日の一句】

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