「外務省のラスプーチン」は「平成の官兵衛」か

『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(佐藤優/新潮社)
『外務省に告ぐ』(佐藤優/新潮社)

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佐藤優ファンとはいいながら、これらの代表作をまだ読んでいなかった、、、

『国家の―』は、佐藤氏がいわゆる鈴木宗男事件との絡みで国策捜査のターゲットとなって逮捕され、死刑囚に挟まれた独房で512日間拘留された経緯を詳細に書いている。

『外務省に―』は『国家の―』から6年後の2011年に出されたもので、作家として活躍するようになった佐藤氏が、さまざまな政治の動きを論評しながら外務省内部の諸問題について書いている。

これらを読むと、政治家と官僚の関係、それぞれの役割、外交の本質、外交官の仕事、メディアのあり方などが、実にリアルにわかる。

<霞が関(官界)と永田町(政界)は、隣町だが、その距離は実はいちばん遠い。なぜなら地球を反対側に一周しなくては行き着けないからである。>(『国家の罠』68頁)

鈴木宗男事件の意味について、佐藤氏が検事の取り調べを受ける中で分析し、出した結論は、とても興味深い。「国策捜査はひとつの『時代のけじめ』」という担当検事の言葉を手がかりに、次のように結論づける。

<現在の日本では、内政におけるケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交における地政学的国際協調主義から排外主義的ナショナリズムへの転換という二つの線で「時代のけじめ」をつける必要があり、その線が交錯するところに鈴木宗男氏がいるので、どうも国策捜査の対象になったのではないか。>(同書292-293頁)

<鈴木宗男氏は、「公平配分モデル」から「傾斜配分モデル」へ、「国際協調的愛国主義」から「排外主義的ナショナリズム」へという現在日本で進行している国家路線転換を促進するための格好の標的になった。鈴木氏をターゲットにしたことによって、二つの大きな政策転換が容易になったと言っても過言ではない。このように整理すれば、鈴木疑惑の背景にある構造が見えてくるようになる。>(同書297頁)

驚くべきは、多くの人が心身に変調をきたすような過酷な拘留と厳しい取り調べの真っ只中で、しかも自らが貶められている事件について、これだけ冷静かつ大局的に分析してしまう力だ。しまいには担当検事が音を上げはじめ、佐藤氏が逆に慰めるようなことになっていくのが、なんとも面白い。

ところで、先ごろ葉室麟さんの小説『風渡る』『風の軍師』について書いた。いずれも今話題の「軍師官兵衛」こと黒田官兵衛が主人公だ。これらの小説では、官兵衛の策士ぶりが半端ではなく、歴史の裏のまたその裏で糸を操った存在として描かれている。

「葉室官兵衛」は、信長暗殺、秀吉の死、関ヶ原の戦い、といった戦国時代の重大事件すべてに深く絡んでいるのだ。そして、いかにも悪知恵(?)を働かせながらも、結局は誰よりも大局的に物事を見ており、「国益」のために動いていく。

この葉室さんの描く官兵衛と佐藤氏が、ボクにはダブって見える。(もっとも佐藤氏の顔はどう見ても西郷ドンだが)

泥をかぶる役を嫌がるわけでもなく、独自のネットワークと交渉術で巧みに世情を分析し、「国益第一」で動いていく姿だ。どこか空恐ろしい感じもそっくりだ。いまの日本は、「激動」という意味でよく戦国時代になぞらえて語られる。こういう先の読めない時代こそ、知恵深く、タフな人物が必要とされるのかもしれない。

ちなみに官兵衛も佐藤氏も、共にキリシタンであるという点もまた興味深い。

【今日の一句】

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全身の 酸素消費の 2割は脳

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「外務省のラスプーチン」は「平成の官兵衛」か」への4件のフィードバック

  1. 「今日やることを明日にして。」 いいですね!
    気持ちが 楽~になります(*^_^*)
    ほほさんにコメントしようと思ったのですが
    ・・・送れないのかな? ボタンがない・・・

    • nagatani様
      ははは、これはたしかによく言ってる台詞です。「ハァ、これはもう明日にしよ!」って。
      引き続きご愛顧の程、よろしくお願いしますね!

  2. 言ったら、悪いのですが、黒田官兵衛がキリシタンって、想像ができないですね。
    イメージ的にキリシタンと縁遠く、キリストが不要という感じですからね。

    • Cissac 様
      たしかに「イメージ」とは程遠いですね(笑)
      それを言うなら、佐藤さんなんかもっと「らしくない」ですよ。
      でもボクはそこに何らかの真実味を感じざるをえません。
      葉室さんは久留米在住の九州人です。ぜひこの作品も読んでみてください!

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