『功利主義者の読書術』とは

『功利主義者の読書術』(佐藤優/新潮文庫)

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佐藤氏の著作はどれも刺激的で、知的興奮に満ちていて、インパクトが強いのですが、とりわけこの本は面白く読めました。

たんに読書のための読書ではなく、読んだものをどのように役立てていくかが大切、ということからこのようなタイトルになっています。

ただし、「読書術」という言葉からイメージされるようなビジネス本的ノウハウ書ではありません。佐藤氏が選んだ30冊の書物を、それぞれ解き明かしていくというスタイルをとっています。

つまり「読み方」について書いているのではなく、この本を「佐藤はこう読む」という実践例集です。手取り足取り教えるのではなく、「俺を見て学べ」という職人的指導ですね。

この解き明かしが抜群に面白いのです。

たとえば、小林多喜二『蟹工船』について。

多喜二が実はエリート銀行マン出身であることに触れてから、<労働者の生活現場を皮膚感覚では知らない。それだから、もっぱら伝聞と活字によって仕入れた知識で仮想空間のプロレタリア世界を作ったのであると筆者は見ている。>(219頁)と述べます。

また、多喜二の別の作品にある拷問シーンを引用し、<この部分を創作しながら、「インテリゲンチャ」である多喜二は、拷問によって真の革命家になることに憧れたのである。渡が三度目に死ぬときの様子も恍惚としている。究極のマゾヒズムの世界だ。>(224頁)とまで書いています。

そういう観点から考えると、多喜二のあの無残な死もまた別の意味合いを持つものに思えてきます。インテリジェンスのプロは、字面だけを素直には読まないのだなといたく感心しました。

紹介されている30冊も佐藤氏らしく、思想書から小説、漫画本、タレント本までと幅広い。が、やはりここでもビジネス本はありません。

アスリートにとってランニングが基礎体力を築いてくれるように、少々骨の折れる固い書物にぶつかっていかないと脳みその足腰(ヘンな言葉ですが・笑)が弱くなってしまうなと思わされます。おススメの一冊です。

【今日の一句】

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お腹がグー なるまで食べない 習慣を

腹ペコは健康の証し。

 

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